† WBC †
〔white blood cell〕
白血球数 基準値:4,000〜9,000/μl


末梢血中の有核細胞で、正常では4,000〜9,000/μl含まれる。
形態学的に、顆粒球〔好中球・好酸球・好塩基球〕と無顆粒球〔単球・リンパ球〕に区別される。
顆粒球と単球は骨髄性細胞由来、リンパ球はリンパ組織由来である。
好中球と単球は食菌〔貪食〕能と運動能により微生物などに対する防御作用をもち、好酸球はアレルギーやアナフィラキシーに、リンパ球は免疫反応に関与する。
白血球の数および分画は病的状態に応じて変動する。


<血液像・白血球百分率>

各球の百分率は、好中球40〜70%、好酸球1〜6%、好塩基球0〜1%、リンパ球27〜46%、単球3〜7%で、これを白血球像〔白血球分画〕という。

● Blast 〔骨髄芽球〕 0%
● Lympho 〔リンパ球〕 27〜46%
● Pro 〔前骨髄球〕 0%
● Aty‐Ly 〔異型リンパ球〕 0%
● Myelo 〔骨髄球〕 0%
● Mono 〔単球〕 3〜7%
● Meta 〔後骨髄球〕 0%
● Eosino 〔好酸球〕 1〜6%
● Band・Stab 〔桿状核球〕 0〜6%
● Baso 〔好塩基球〕 0〜1%
● Seg 〔分葉核球〕 40〜60%

◇ 好中球〔neurtrophilic leukocyte〕
顆粒白血球の1つ。顆粒は中性色素に染まり、核の形で幼弱型〔Blast,Pro、Myelo、Meta〕、桿状型〔BandまたはStab〕、分葉型〔Seg〕に分ける。直径約10μm。遊走性、食作用が著明。

◇ リンパ球〔lymphocyte〕
白血球の1種。球形の細胞で、リンパ中の細胞成分の大多数および末梢血中白血球分画の35%前後を占める。直径7〜8μmの小リンパ球と10μmを超える大リンパ球とがある。
抗体産生、拒絶反応または過敏反応など生体の免疫・防御機構に重要な働きをもつ。機能的にT細胞〔細胞性免疫に関与〕、B細胞〔液性免疫に関与〕、NK細胞〔ナチュラルキラー細胞〕などに分けられる。

◇ 単球〔monocyte〕
血液中に存在する白血球細胞の1つ。直系20〜30μm、白血球中最大の細胞である。骨髄で産生され、血管外に出るとマクロファージになるといわれる。
単球の段階でも活発な貪食能をもち、細菌や原生動物、ときに赤血球なども貪食し、生体防御に働く。


<幹細胞とその分化>


<生理的機能>

● 白血球は骨髄の全能性幹細胞から分化し、好中球・単球・好酸球・好塩基球・リンパ球に最終的には成熟し、末梢血中に流出する〔上図〕。
好中球や単球の成熟には、それぞれG‐CSFやM‐CSFが作用している。

● 好中球〔及び単球〕は、細菌や真菌などの病原微生物に対する生体防御の中心的役割を果たしている。
好酸球は抗原抗体反応が行われている場所に集積し、抗原抗体複合体を貪食する。
好塩基球は、IgEの関与するアレルギー反応に重要な働きをする。
リンパ球は、特異的免疫能〔細胞性:Tリンパ球、液性:Bリンパ球〕の中心的役割をなすが〔抗ウイルスや抗癌作用など〕、一方、自己免疫の病態にも重要な関与をしている。
それぞれの白血球はサイトカインなどによりネットワークを形成していることが明らかとなってきている〔下図〕。
● 白血球数の増減は、どの分画細胞が増減しているかを検討する必要性がある。
それぞれの細胞は、上記の機能があることから、その機能を必要としているときには、原則的にその数は増加する。
血球数の減少は、骨髄での産生の低下と末梢での破壊の亢進による場合が考えられる。


<性状と寿命>

白血球は無色、有核で、赤血球より少し大きい。アメーバ様運動を行い、それによって毛細血管を通過して出入りする。形は円形のもの、あるいは不整形のものなどがある。
数は1μl中4,000〜9,000で、数百の赤血球に対して1個の割合である。
血流中の白血球の寿命は赤血球よりもずっと短く、成熟顆粒球で約10時間といわれ、肝臓または脾臓で壊される。抗癌剤や放射線は骨髄の造血機能を強く障害する。


<はたらきとその増減>

白血球は主に食作用という働きをもち、細菌などの異物や毒素が体内に侵入すると、血流によって全身をめぐり、また毛細血管を通過して血管外に遊出し、それらを捉えて処理する。
また、白血球中にある酵素が異物を分解し無毒化する。
好中球には細菌の食作用があり、単球には壊れた組織や傷害された血球、異物、色素などに対する食作用がある。

白血球中でも、特に好中球と単球では遊走性や食作用が著明である。
そのため体内に病原菌が侵入すると、たとえば肺炎や化膿性疾患の場合では、好中球が血液中に多量に動員され局所に集中する。肺炎や虫垂炎などの感染症があるときに白血球数が増加するのはこのためである。
また白血球は血管内でも作用するが、血管外に出て組織の中にまで入り込んで働くこともできる。

リンパ球は免疫を担当する細胞で、大きく2つに分けられる。すなわちTリンパ球とBリンパ球である。
Tリンパ球は骨髄に由来し、胸腺の影響を受けて成熟したもので、細胞性免疫の主役を演じる。Bリンパ球も骨髄に由来し、主として液性免疫の主役を演じる。

単球は食作用が盛んで、異物や抗原が血液中に入るとそれを取り込み、Bリンパ球に作用して抗体を産生させる。単球は組織にあるマクロファージと同じものである。
マクロファージとは、直径約15〜20μmの球形の核をもっている大型の単核球で、食作用があることから大食細胞ともいわれる。


<造血因子>

顆粒球コロニー刺激因子〔G‐CSF〕は、骨髄で、特に好中球産生を促進する造血因子の1つで、分子量約2万の糖タンパクである。
血管内皮細胞などさまざまな細胞で産生され、末梢血中の好中球を増加し、殺菌などの好中球機能も亢進する。種々の原因による好中球減少症の治療に用いられる。
ほかに、赤血球を増加するエリスロポエチン、マクロファージを増加するマクロファージコロニー刺激因子〔M‐CSF〕などの造血因子があり臨床に用いられている。


<抗体産生機構>



<看護にとっての意味>


● 白血球絶対数増加時
病的な刺激に対する生体の防御反応が起きている状態である。
◇ 好中球増加→細菌感染に対する最初の防御機構
◇ 好酸球増加→アレルギー反応に関与
◇ リンパ球増加→ウイルス感染症で増加

● 未熟な白血球増加時
病原微生物に対する生体防御機能が低下し、また造血組織に異常細胞が蓄積して、その正常な機能を妨げる。
生体は、易感染状態・出血傾向・貧血状態にある。白血病が疑われ、骨髄穿刺により白血球を分類して診断する。

● 白血球減少時
WBCの減少は顆粒球〔特に好中球〕の減少を示し、易感染状態をきたす。


<各球の増加・減少について>

◆ 好中球 ◆

● 好中球減少症〔顆粒球減少症〕
白血球のうち顆粒球の絶対数が減少した病態をいう。好中球が顆粒球の大部分を占めるため、一般には好中球減少症と同意語として用いられることが多い。
また、顆粒球数が著しく減少した重症型を無顆粒球症と呼ぶこともある。
一般的症状として悪寒、高熱、壊疽性口内炎などを特徴とする。
原因としては、薬物特にアミノピリン、抗炎症薬、抗甲状腺薬、再生不良性貧血、白血病、自己免疫疾患などにみられる骨髄形成不全などがあるが、原因不明のものもある。
治療は原因物質の除去、原疾患の治療を行い、副腎皮質ホルモン、抗生物質などの投与、γグロブリン、顆粒球輸血、新鮮血輸血などを行う。
また、重篤な敗血症などの感染症を併発・反復しやすいので感染予防につとめる。

● 好中球増加症
白血球中の好中球の占める割合は、正常では桿状核2〜13%、分葉核が38〜58%である。
末梢血中の白血球数の増加がなく好中球の割合のみ増加している場合を相対的好中球増加症、白血球数も好中球の割合もともに増加している場合を〔絶対的〕好中球増加症という。感染症や出血、中毒などの際にみられる。


◆ 好酸球 ◆

● 好酸球減少症
末梢血中の好酸球数が減少している状態をいう。クッシング病、全身性エリテマトーデス、敗血症などの疾患の際、および受傷などのストレス時や副腎皮質ホルモン投与の際などにみられる。

● 好酸球増加症
好酸球が、末梢血液中で増加した状態のことで、通常白血球分画で10%以上の場合をいう。アレルギー性疾患、寄生虫疾患、皮膚疾患、伝染病などの際にみられ、診断上の重要な所見となる。


◆ 好塩基球 ◆

● 好塩基球増加症〔好塩基性白血球増加症〕
白血球の顆粒球のうち、好塩基球が末梢血中に基準値〔0〜1%〕以上に増加した病態をいう。慢性骨髄性白血病、急性伝染病の回復期や異種タンパク注射などで認められるが、好塩基球の機能の詳細は不明である。


<疾患の解説>

● 急性白血病〔AL〕
未熟白血球〔芽球〕の全身性腫瘍性増殖で、芽球が骨髄に30%以上見られ、通常末梢血中にも出現する。
症状として、貧血・出血傾向・発熱・骨痛・リンパ節の腫脹・肝脾腫・歯肉炎などを認める。
検査所見では、末梢血で汎血球減少症・白血病裂孔〔芽球と成熟白血球のみでその中間段階にある白血球を認めない〕・アウエル小体などが見られ、骨髄では多数の白血病芽球が認められる。
病型分類〔FAB分類〕の確定に骨髄細胞の特殊染色〔ペルオキシダーゼ染色〕、染色体・表面マーカーの分析、血中・尿中のムラミダーゼ値等が必要になる。

● 慢性骨髄性白血病〔CML〕
フィラデルフィア〔Ph1〕染色体をマーカー染色体とするクローンの異常増殖を本態とする白血病である。
軽度の貧血と脾腫が主症状で自他覚症状は軽いが、末期に発症する急性転化は急性白血病と酷似した臨床症状・血液像を示す。
検査所見としては、左方移動を伴う白血球の著明な増加、好塩基球の増加、好中球アルカリホスファターゼスコアーの低下、Ph1染色体陽性、血清ビタミンB12・尿酸値の高値などが認められる。

● 慢性リンパ球性白血病〔CLL〕
白血病細胞が主として分化の進んだリンパ球よりなっている白血病である。
通常症状は少ないが、リンパ節の腫脹・脾腫・軽度の貧血・易疲労感・体重減少・発熱・発疹を認めることがある。
末梢血リンパ球〔小リンパ球〕数の著増・正球性正色素性貧血・血清γグロブリンの減少等を検査にて認める。

● 悪性リンパ腫〔ホジキン病と非ホジキン病〕
リンパ網内系組織に原発する非上皮性悪性腫瘍の総称である。ホジキン病と非ホジキン病とに分類される。
表在リンパ節腫大・発熱・体重減少・盗汗などの症状を認める。
検査所見としては、続発性貧血、好中球・好酸球増加、リンパ球の低下などが見られる。

● 伝染性単核球症
エプスタイン‐バー〔Epstein‐Barr〕ウイルスによる感染症。
咽頭痛・発熱・リンパ節腫脹で発症し、発疹・肝脾腫を認めることもある。
末梢血にてリンパ球増多を伴う異型リンパ球の出現、ポール‐バンネル〔Paul‐Bunnel〕抗体陽性を認め、約5%に肝障害を合併する〔GOT・GPTなどの上昇〕。

● 単クローン性高γグロブリン血症〔M蛋白血症〕
血清中あるいは尿中に単クローン性の異常な免疫グロブリンを認める病態の総称。
多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、原発性マクログロブリン血症、癌、膠原病、胆道系疾患などでみられる。

● 骨髄腫
形質細胞系の腫瘍性増殖を本態とする疾患。
骨痛、全身倦怠感、発熱、感染、体重減少、知覚異常、貧血など症状は多彩である。
正球性正色素性貧血・骨髄での骨腫瘍細胞の出現・一種類の免疫グロブリン増加と他の免疫グロブリンの低下〔液性免疫能の低下〕・尿中ベンス‐ジョーンズ蛋白陽性などを認める。


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基準値(正常値)は計測機器によって多少の違い(誤差)があります。各病院の検査データ基準値を目安にしてください。
また、表示単位が異なる場合は基準値が全く違う場合もありますので、検査値が大幅に違うときは同じ単位で表されているかも確認してください。

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