† K †
〔potassium〕
血清カリウム 基準値:3.3〜5.0mEq/l


カリウムは体内に存在する量の90%が細胞内にあり、主な細胞内陽イオンとして細胞内浸透圧を保つ。
生体の恒常性から血漿・細胞外液中の主な陽イオンはナトリウムで、カリウムは一定の低い値に保たれている。
血漿カリウム濃度が限界を超えて増加または減少すると、細胞機能に大きな影響を及ぼす。
カリウムはNa+やH+とともに酸塩基平衡に関与するとともに、神経、筋肉の機能に影響を与えている。


<特徴>

● Kは細胞内で最も大量に存在する陽イオン。
● Kは主に食事で摂取され、大部分が尿中に排出される。
● 糸球体で濾過されるKの大部分は尿細管で再吸収される。アルドステロンはNaの再吸収を増し、交換にKの尿中への排出を促進する。


<高カリウム血症>〔5.5mEq/l以上〕

筋細胞の再分極が抑制され、筋力の低下、骨格筋麻痺、低血圧を伴う徐脈、極端な場合には心停止をきたす。腎不全、アジソン病、組織破壊、ときには無塩しょうゆの過剰摂取などによって起こる。


<低カリウム血症>〔3.0mEq/l以下〕

食欲不振、脱力、無気力、胃や腸のアトニー、麻痺性イレウス、低血圧、不整脈などがみられ、ときに低カリウム血性周期性四肢麻痺をきたすことがある。カリウム欠乏ではインスリン分泌の障害、ジギタリス中毒、腸管運動の低下、腎障害が現れる。


<高カリウム血症をきたす疾患の解説>

● 偽性高K血症
採血時の駆血時間が長かったり、サンプル血液から血清を分離するときに溶血したり、著明な白血球や血小板の増多がある場合、これらの細胞からKが血清中に放出されて、見かけ上の高K血症となるもの。

● 腎不全
高K血症の原因として最も頻度の高いものは腎不全である。腎不全は様々な腎疾患の終末像で、蛋白尿、高血圧から始まり、乏尿、浮腫、貧血、心・神経症状などあらゆる全身的な症状が現れ、最終的には人工透析による治療が必要となる。
高K血症の他、血清クレアチニン、尿素窒素の上昇を伴う。高K血症はKの尿中への排出が低下するために起こる。ことに食事制限が悪く、果実、生野菜を多く取っている場合などに見られる。

● 組織、細胞からのK放出
広範な組織破壊を伴う病変があれば細胞内Kが血液中に放出されて高K血症となる。溶血性貧血、不適合輸血でも同様。

● 副腎皮質機能低下症
原発性と続発性とに分けられる。原発性のものは一般にAddison病と呼ばれる。Addison病は皮膚の色素沈着が特徴的で、その他易疲労感、神経症状などの自覚症状や、低血圧、脱毛などの他覚症状を呈する。
アルドステロン分泌が低下するために、Naの再吸収が減り、逆にKの排出は減少する。

● 薬物の影響
腎機能の悪い場合に果汁などKの豊富なものを大量に摂取すると高K血症を招く。
Kを含む薬剤〔KCl〕の投与でも上昇する。
抗アルドステロン性の利尿薬であるスピロノラクトンは血清Kを上昇させる。
輸血用保存血〔とくにACD血〕は血球中のKが血漿中に逸脱するので血漿K値が上昇し、とくに溶血があれば急増する。これを輸血すると高K血症になるおそれがある。一般には輸血後Kが赤血球中にもどるので、上昇の度合いは少ないが、輸血速度の速い場合には注意が必要である。

● アシドーシス
細胞内にHイオンが増すため、Kイオンが血液中に放出される。したがって糖尿病性ケトアシドーシスでは高K血症をみる場合が多い。


<低カリウム血症をきたす疾患の解説>

● 腎性喪失
高アルドステロン症〔Conn症候群〕では尿中へのK排泄が増加するために低K血症となる。
ループ利尿薬、ザイアザイド系利尿薬など遠位尿細管〔Na‐K交換部位〕に働く薬物を使用した場合にも低K血症は起こりうる。

● 腎外性喪失
下痢、消化液の吸収などにより消化液の喪失が大量に起これば、低K血症をきたす。

● 細胞内への移行
インスリン投与時、アルカローシスまたはアシドーシスからの回復時には、細胞外から細胞内へのKの移動が生じるために血清Kは低下する。


<血清カリウム値異常時の心電図>

心筋の収縮は、血清電解質〔主にKイオンとCaイオン〕の変動の影響を受けやすいので、各種代謝性疾患の重症期や心臓の術中・術後にはしばしば電解質の変動による独特の心電図所見をみる。


<高K血症時の心電図と低K血症時の心電図>



● 高K血症時の心電図
血清K値の上昇の程度によって段階的に波形が変化する。

@ 5.5mEq/l以上
QT時間が短縮するとともにT波が増高し、幅の狭い尖った型となって「テント状T波」と呼ばれる。T波の高さがR波の高さを超えることもある。

A 6.5mEq/l以上
QRS波の幅が広くなり、P波は平低化するとともにPQ時間が延長して1度房室ブロックとなる。

B9.0mEq/l以上
極めて重症で、徐拍となりP波は不明でQRS波は一段と幅広く、やがてQRSとTの区別がつかなくなり、そのまま12mEq/l以上となると心停止となる。

◇ 原因
腎不全、Kの投与過剰、消化管出血、血管内溶血、外傷、熱傷、アジソン病などのほか、外科手術後尿量の極端に乏しい状態が続けば、この傾向になりやすい。
心臓手術で心静止下に手術を行うために、高K液を冠血管内に急速注入すると心筋の興奮性は減弱し、数十秒以内に心停止となる。

◇ 予後
血行動態的に重大であるが、K値が低下すれば簡単にもとに戻る。

◇ 対応
直ちに医師に連絡する。
術中の高K液注入による心停止については、心臓の手術が終わった時点で正常の血液で冠血管系の高K液を洗い流すと、まもなく自己心拍が再開し、やがてもとの調律に戻る。


● 低K血症時の心電図
血清K値の低下の程度によって段階的に波形の変化が現れる。

@ 3.0mEq/l以下
T波がやや平低化する一方、T波の後に平素はあまり目立たないU波がやや大きく現れる。このU波はT波より大きく「異常U波」と呼ばれる。

A 2.5mEq/l以下
STが低下してT波が陰性化し、大きいU波がT波のようになってQT延長のように見える。またPQの延長〔1度房室ブロック〕や心房性期外収縮が現れ、P波はU、V、aVF誘導では増高し、モニター上にも見られることがある。

◇ 原因
利尿剤による大量の排尿、とくに心臓手術の希釈体外循環後の利尿期に起こりやすいほか、消化器系疾患では大量の嘔吐・下痢により容易に低K状態になる。また大量の発汗、インスリン投与後、原発性アルドステロン症にもみられる。

◇ 予後
放置すれば心房性期外収縮が頻発し、上室性または心室性頻拍をへて心室細動となる恐れがある。

◇ 対応
直ちに医師に連絡する。


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基準値(正常値)は計測機器によって多少の違い(誤差)があります。各病院の検査データ基準値を目安にしてください。
また、表示単位が異なる場合は基準値が全く違う場合もありますので、検査値が大幅に違うときは同じ単位で表されているかも確認してください。

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